リレートーク#川崎洋平

IAAE常務理事の川崎洋平です。

皆さん、Nintendo Switch のゲーム「リングフィットアドベンジャー」をご存じですか。

「冒険しながらフィットネス」をコンセプトに気軽に全身運動ができるニンテンドースイッチのゲームです。

この「リングフィット」の腰痛への効果を検証した研究、こちら最近私が統計解析責任者をとして参画した研究です。

研究対象者は、3か月以上腰痛に悩み、しかも医療機関で治療を受けても改善しなかった40人。

研究の参加者たちは20人ずつ2つのグループABに分け、グループAには週に1回、40分間のゲーム(アドベンチャーモード30分+腰痛改善プログラム10分)を、グループBにはゲームはしてもらわず、鎮痛薬の処方(一般的な治療法)を受けてもらいました。

これを8週間続けてもらい、グループABの人に腰痛の状態を報告してもらったところ、ゲームを行ったグループAで腰痛が有意に改善していることがわかりました。※ 10段階のVASスコアで7.42→4.81

つまり、痛み止めを飲むよりも リングフィットアドベンジャー のゲームが痛みを軽減するのに効果があったということですね。

この背景には様々な要因が考えられますが、今回注目したのは 「痛みへの自己効力感」 でした。

要するに、「腰が痛くても動けるぞという自信」と言い換えられると思います。

痛みへの自己効力感が低いと、痛みを強く感じたり、長引いてしまったりすることが報告されています。

私たちは同時に、週に1回 リングフィットアドベンジャー を行ったグループAに、「痛みへの自己効力感」を調べるアンケート調査(PESQ)を行いました。

すると、グループAは以前と比べて点数が高くなっており(19.71→30.13)(痛みへの自己効力感が高くなった)、グループBには変化はありませんでした。

このことから、ゲームをすることを通じて「痛いけれども動ける」という体験や、あるいは「痛いけれどもなんとか動ける方法はないだろうか?」と試行錯誤を行ったとすると、その行為によって自己効力感が高まったのではないかと考えられました。

いずれも、最近のゲームはゲームの枠を超えて私達の健康生活にしっかりコミットしてくれることがよくわかり、ぜひ他のゲームの効力も調べてみたいものですね。

こちらの論文の書誌情報は以下です。

Effects of Nintendo Ring Fit Adventure Exergame on Pain and Psychological Factors in Patients with Chronic Low Back Pain Games Health J. 2021 Apr 22. doi: 10.1089/g4h.2020.0180.

https://news.yahoo.co.jp/byline/mamoruichikawa/20210516-00238006
https://www.nintendo.co.jp/ring/

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川崎洋平(Yohei Kawasaki)

日本赤十字看護大学 看護学部 准教授

埼玉医科大学 客員准教授

千葉大学 客員准教授・特任准教授

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 客員研究員

千葉科学大学 薬学部 非常勤講師

リサーチマップ https://researchmap.jp/ykawasaki

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